遺言によって決めることができる事項
遺言によって被相続人の様々な意思を残しておくことができます。その中でも、財産関係や身分関係について以下に記載します。
遺言によってのみすることができる相続分の指定・指定の委託について
相続分の指定 |
相続人の全員又は一部のものについて、遺言によって法定相続分と異なる割合の相続分を定めることです。
例えば、「A、B、Cの相続分は各3分の1とする」などのように定めます。相続分の指定は数的割合による指定であり、誰がどの財産を相続するかを指定する遺産分割方法の指定とは異なります。この相続分の指定によって定められた相続分の事を「指定相続分」といいます。
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相続分の指定がなされると、法定相続分に優先して各相続人の相続分が定まります。また、相続分の指定について第三者に委託することもでき、これを相続分の指定の委託といいます。相続分の指定を委託された第三者は、指定の委託について拒否することも可能です。その場合相続分の指定の委託は無効であり、法定相続分によって相続することになります。
相続分の指定がなされたとしても、相続人全員による遺産分割協議は有効にすることができ、遺産分割協議によって定められた割合による登記申請もすることができます。この場合の登記申請としては2パターンあります。
1、指定相続分による相続登記を経て遺産分割協議による所有権移転登記をする方法 |
2、遺産分割協議後の割合による相続登記をする方法 |
通常は一回の申請ですることができ、登録免許税も安く済ませることができるため、後者のパターンですることが多いです。
相続分の指定も遺言によってするため、他の相続人の遺留分を侵害する場合には、遺留分減殺請求権を行使されるおそれがありますので、この点注意が必要です。
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遺言によってのみすることができる遺産分割方法の指定・指定の委託について
遺産分割方法の指定 |
遺産分割方法の指定とは、相続分を変えることなく、どの財産をどの相続人に対して相続させるかを指定する方法であり、数的割合を指定する相続分の指定とは異なります。
例えば、「甲不動産はAに相続させ、乙不動産はBに相続させる」などのように記載します。また、「甲不動産を金銭に換価し、分割するものとする」という記載も遺産分割方法の指定となります。
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前者の指定方法の場合、相続財産と相続人が確定しているため遺産分割協議を行う必要はありません。登記申請の際は、当該遺言書を添付書類として提出して申請します。
後者の指定方法の場合には、換価後の分割割合が記載されていないため、相続人全員による遺産分割協議が必要となります。登記申請の際は、当該遺言書と遺産分割協議書を添付書類として提出して申請します。
なお、換価処分の場合は、相続人全員により売却して処分する方法もありますが、相続人一人を処分のために便宜、登記名義人とし、売却後の金銭を分割することもできます。この場合、換価処分後の金銭の分割について贈与税の適用を受けることがありますので、遺産分割協議書の記載には注意が必要です。
遺産分割方法の指定の委託 |
遺産分割方法についても、相続分の指定と同様に、第三者に指定の委託をすることができます。これを遺産分割方法の指定の委託といいます。遺産分割方法の指定は前記のとおり、相続分を変化させるものではないため、委託を受けた者は法定相続分の割合による分割方法の指定を行わなければならないと解されています。
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遺言者は、遺言によって相続開始のときから5年間、遺産分割を禁止することができます。
遺産分割の禁止は、全ての相続財産について禁止することも可能ですし、一部の特定財産のみを分割禁止の対象とすることもできます。遺産分割の禁止がなされる場面としては、居住用不動産について現に住んでいる相続人が存在するため、住居確保のためになされる場合や、事業用不動産について、特定の相続人に対し事業を承継させるために当該不動産について分割を禁止する場合などが考えられます。遺産分割禁止は最長5年間ではありますが、5年間の期間があることにより、上記不動産の取得に対する代価を捻出するための時間を稼ぐことができます。
遺産分割の禁止は、不動産の場合には登記しなければ第三者にこの特約の存在を主張することができません。まず、相続登記を申請し、その後当事者全員が申請人となって遺産分割禁止について登記を申請します。
遺産分割の禁止については、遺言以外の方法でもすることが可能です。
1、共同相続人間の協議による場合 |
共同相続人間の協議により、遺産分割の禁止をすることもできます。相続財産について未確定であったり、財産内容により分割を待ったほうが良いなどの判断がなされたときに用いられることがあります。しかしながら、遺言の場合と同様、最長5年間という期間制限があるため注意が必要です。
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2、調停による場合 |
共同相続人間で協議が整わない場合に、家庭裁判所に対して、遺産分割の禁止を求める調停を申し立てることもできます。
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3、審判による場合 |
共同相続人間で協議が整わず、調停においても解決しない場合には、家庭裁判所に対して遺産分割の禁止の審判を申し立てることができます。審判による場合には、遺産分割をすることが妥当ではないなどの「特別な事情」があることが必要となります。「特別な事情」とは、相続財産や相続人が確定していない、相続財産に分割に適さないものが含まれていることなどがあげられます。遺産分割禁止の審判の後に事情の変更があったときは、審判の取消しまたは変更の申立てをすることができます。
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遺言執行者とは、被相続人の最後の意思である遺言の内容を実現するために手続き等を行う者をいいます。遺言執行者には未成年者や破産者はなることができませんが、その他については特に要件がありません。しかしながら、相続人の中の一人が遺言執行者になった場合、無用なトラブルを招くおそれがあり、また遺言執行についての業務は複雑で専門的な知識が必要になる場合が多いので、専門家を指定した方がよいでしょう。この遺言執行者を遺言の中で指定することを、遺言執行者の指定といいます。
遺言執行者がいる場合には、相続人は相続財産を勝手に処分することはできません。勝手にした当該行為は無効となります。したがって、遺言執行者が指定されている場合には、速やかにその者と連絡を取るようにしてください。
遺言執行者は遺言の内容に応じて様々な業務を行いますが、業務の内容については次のように分類されます。
遺言の内容に次の記載がある場合には必ず遺言執行者が当該業務を行わなければなりません。指定がない場合には、家庭裁判所に選任してもらう必要があります。
遺言書に次の記載がある場合、遺言執行者または相続人がこれらの業務を行うことができます。しかし、遺言執行者がいる場合には、遺言執行者がなすべき業務になりますので、相続人は行うことはできません。
遺言により遺言執行者を直接指定することもできますし、遺言執行者を指定することを第三者に委託することもできます。しかし、指定された者が承諾してはじめて遺言執行者に就任することになり、また就任を承諾するかの認否は指定された者の自由ですから、予め候補者に対して承諾を得ておくことにより、円滑に遺言内容の執行を任せることができるでしょう。
未成年後見人とは、「未成年者に対して親権を行う者がいないとき、または親権を行う者が財産に関する管理権限を有しないときに、未成年者の法定代理人となる者」をいいます。つまり、親がきちんと未成年の子を管理できない場合に、その親の代わりとなる者のことです。親が亡くなってしまっては未成年の子を管理教育できなくなってしまうため、遺言によって未成年後見人を指定できます。
民法では、最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができると定められています。したがって、両親が共同して親権を行使している場合に、一方が亡くなってしまったとしても、この場合もう一方の親が親権を行うことができるため、未成年後見は開始しません。両親の双方が亡くなって初めて未成年後見が開始することになります。
しかしながら、現在単独親権者である者は自分の死後に、誰が子供の面倒を見てくれるのか気になると思います。こういった場合に自らの遺言で、未成年後見人を指定しておく実益があるでしょう。未成年後見人の指定がない場合には、家庭裁判所が審判によって選任することになります。
未成年後見人は、個人、法人双方ともなることができます。また従前は1人でなければならないと法律で定められていましたが、現在は複数の未成年後見人を置くことも可能になりました。未成年後見人の欠格事由は次のとおりです
未成年後見人の欠格事由 |
1、未成年者 |
2、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人 |
3、破産者 |
4、被後見人に対して訴訟をした者及びその配偶者、直系血族 |
5、行方の知れない者 |
万が一のときに備えて、ご自身が信頼できる親族等を未成年後見人に指定しておくと安心です。
未成年後見後見監督人とは、「未成年後見人を監督する事務を行い、急迫の場合に必要な行為を行う者」のことをいいます。未成年後見人が行う行為が適切になされなければ、未成年者に不利益が生じてしまう場合があります。このようなことがないように、未成年後見人を監督し、必要な資料等の提供を求め、必要に応じて未成年後見人の職務を一時的に行ったり、不正な行為等があった場合には、家庭裁判所に対して未成年後見人の解任を申立てます。
未成年後見人と同様に、未成年後見監督人も遺言によって指定することができます。また個人、法人双方がなることができますし、複数いても問題ありません。未成年後見監督人の欠格事由は次のとおりです。
未成年後見監督人の欠格事由 |
1、未成年者 |
2、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人 |
3、破産者 |
4、被後見人に対して訴訟をした者及びその配偶者、直系血族 |
5、行方の知れない者 |
6、未成年後見人の配偶者、直系血族、兄弟姉妹 |